「小学校のころから、よくこけるんです」
レッスンで、こんな相談を受けることがあります。職場のスリッパでもつまずく。ランニング中にこけたこともある、と。
結論から言うと、つまずく人は足を「膝から」動かしています。股関節から動かしていない。今回は、その話です。
スリッパでつまずくのは、膝から下だけで歩いているから
スリッパでつまずく人は、ほとんどの場合、股関節が上がっていません。膝から下だけを前に出して歩いているので、つま先が地面すれすれを通る。だから引っかかる。
股関節を動かすと、その下についている膝も足首も連動して動きます。足首の高さを出すには、股関節から動かすしかない。膝や太ももから動かすと、いちばん上の股関節の角度が緩やかなままになって、足首の高さが出ません。
もう一つ、体幹との関係もあります。体幹から離れたところを動かすと、体幹がぶれます。股関節から動かすことで、上半身の安定にもつながります。
足だけでなく、身体全体を上げる
足だけを上げるのではなく、身体全体が上がることを意識してもらいます。
足の軌道(上から落とす)が上手になっても、つまずく方がいます。足だけが上がっていて、上半身が一緒に上がっていない。これが、つまずくいちばんの理由です。
ランニングは、ジャンプの連続です。足を振り上げたときに、身体全体がふわっと上に浮く。そのとき、地面についている側の膝は縄跳び同様にあまり曲げない。曲げないから高さが生まれ、つま先が地面より高い位置を通る。だからつまずかない。
歩幅を意識すると、この膝が曲がってしまいます。なので、前に進もうとするより、上にふっと上がることを意識してもらいます。力を入れると重心が下がるので、力感は抜いて。
確かめる目安は「お腹に力が入る」感覚
私が最近、お客さま全員に伝えているのは、「お腹に力が入る」感覚です。
ランニングは、野球のようにインパクトの瞬間に自分で力を入れるスポーツではありません。着地というインパクトの瞬間に、地面から返ってくる力(床反力)を受けます。身体を1本のバネのように使って走る、いわゆるスプリングマスモデルです。
ここで大事なのは、腹筋に自分で力を入れようとすることではありません。跳ね返ったときに自然と力が入る位置に、お腹を置いておくことです。身体は直上である必要はありません。前傾していても、身体の軸が床反力を受け止められていればいい。その感じがあれば、腰は勝手に高くなっています。
逆に、お腹の力を抜いて走ると、上半身が前に倒れて、脚だけで走る形になります。後半に疲れてくると、私もこうなります。だからこそ、走っているときのお腹の感覚を、フォームを確かめる指標にしています。
走りながらいきなり直すのは難しい
レッスン中、走っている途中でお腹の話をしようか迷うことがあります。でも、たいていはやめます。走りながら意識することを増やすと、今できている動きまで崩れてしまうことがあるからです。
股関節から動かす感覚は、普段の生活でつくる
私が大切だと思うのは、普段の生活から意識することです。フォームは、レッスンの時間だけでは定着しません。普段の生活が適当だと、すぐに溶けてしまいます。
意識してほしいことは3つです。
普段の歩き方:歩くときも股関節を起点にします。膝下を大げさに上げる必要はありません。見た目は普通のウォーキングで大丈夫です。
ドリルとランジ:走る前の準備運動は特に股関節から動かします。
下り坂:へっぴり腰にならないこと。お尻を前に押し出しながら下ると、上りと同じフォームになります。
私は、膝やももから足を動かすことはありません。上りも下りも、全部股関節からです。それが、身体の仕組み上はいちばん効率がいい。
おまけ:シューズのいちばん奥の穴は、基本使わない
余談です。レッスン前に、靴ひもの話になることがあります。
ランニングシューズのいちばん奥にある穴は、基本、使いません。蹴って足が地面を離れるとき、足首は前に倒れます(背屈)。あそこまでひもを通すと、そのときに足首が痛くなる。サイズが合わない靴で、どうしても足首だけホールドしたいときの穴だと思ってください。