「ヨーグルトは、私のお腹に合わない」
「果物を食べると張るから、もう食べない」
「豆も小麦も避けたほうがよさそう……」
お腹の調子をよくしようとするうちに、食べられないものが増えていませんか?
でも、その食品を「自分には合わない」と決める前に、確認してほしいことがあります。
何を食べたかだけでなく、どれくらい、何と一緒に食べたか。
ここを見落とすと、本来は楽しめる食品まで、食卓から遠ざけてしまうかもしれません。
こんにちは。ニューヨークを拠点に、食事と健康についてお伝えしている栄養学博士のいとうゆきです。
先日は、お腹の張りや便通の変化に関わることがある「FODMAP(フォドマップ)」をご紹介しました。
今回は、その続編。「合わない食品探し」だけでは見えてこない、お腹の不調と食べ方の関係についてお話しします。
① 「食べたら不調になった」だけで、その食品を犯人にしない
例えば、昨日は少量の果物を食べても平気だったのに、今日はスムージーにたっぷり入れたら、お腹が張った。
このとき、「やっぱり、この果物は私に合わない」と考えていませんか?
見直したいのは、食品の種類だけではありません。昨日と今日で、食べた量は同じだったでしょうか?
FODMAPは、小腸で吸収されにくく、腸内細菌によって発酵されやすい糖質の一群です。食品によっては、少量なら低FODMAPでも、量が増えると評価が変わります。また、無理なく食べられる量には個人差があります。
つまり、「その食品が合わない」のではなく、「その量では負担になった」という可能性もあるのです。
食品名だけで判断するより、まずは量を確認する。それだけで、振り返り方が変わります。
※食物アレルギーなどで除去を指示されている食品は別です。自己判断で食べ直さず、医師の指示に従ってください。
② 「少しずつしか食べていない」のに、不調が出る理由
「量が大切なのはわかった。でも、私はどれも少しずつしか食べていません」
そんな方に知っていただきたいのが、食事全体での重なりです。
例えば、こんな朝食。
ヨーグルト
りんご
はちみつ
オリゴ糖入りのパウダー
ひとつひとつは少量でも、商品や分量によっては、複数のFODMAPをまとめて摂る組み合わせになります。
一度の食事で摂ったFODMAPの合計量が、その人の許容量を超えて症状につながる場合があります。この考え方が「FODMAPスタッキング」です。
ここで、「ヨーグルトが悪い」「りんごもダメ」と、一品ずつ禁止していくのは早計です。
単品の相性だけでなく、組み合わせたときの量も見る。
お腹が張った日の食事を振り返るときは、メインの食品だけでなく、トッピングや甘味料、飲み物も書き出してみましょう。見落としていたものが見えてくるかもしれません。
③ 「低FODMAPなら、いくら食べても大丈夫」も誤解です
ネットで食品リストを見つけ、「こちらは食べてよい、こちらは避ける」と分けていませんか?
FODMAPの情報は、食品名と分量をセットで読むことが大切です。
同じ食品でも、量によって評価が変わる場合があります。「低FODMAP」という言葉だけを見て、自由に量を増やせるとは限りません。
一方で、低FODMAPの食品を組み合わせたら、必ず問題が起こるわけでもありません。モナッシュ大学の基準は、複数の食品を一緒に食べることも考慮して設定されています。
調子がよい方まで、毎食の重なりを細かく心配する必要はありません。 スタッキングは、食事を調整しても症状が残る方が、専門家と検討する視点のひとつです。
知識は、食事のルールを増やすためではなく、自分に必要な調整を見つけるために使いたいですね。
④ 食べ物だけを疑っていると、見逃すこともあります
「昨日とほぼ同じ食事なのに、今日は調子が悪い」
そんなときまで、食品のせいだと考える必要はありません。
腸と脳は、神経やホルモンなどを通じてやりとりしています。過敏性腸症候群(IBS)では、こうした相互作用が症状に関わり、ストレスがきっかけになることもあります。
「気のせい」という意味ではなく、食事以外の条件もお腹の反応に関係するということです。
食品の種類を減らし続ける前に、その日の緊張や忙しさ、便通などにも目を向けてみましょう。
やめる食品を増やす前に、記録の仕方を変えてみる
「ヨーグルトを食べて張った」という記録だけでは、判断の材料が足りません。
例えば、こんなふうに残してみてください。
【記録の例】
食品と量:ヨーグルト○g、りんご○切れ。一緒に摂ったものは、はちみつ、パン、飲み物など。
症状と時間:食後○時間に張り。痛みは軽い。
その日の状況:会議で緊張、便秘気味など
最初は、気になった食事を数日分メモするだけでも構いません。
何かを調整するときも、一度にすべてを変えると、何が関係していたのかわかりにくくなります。記録を手がかりに、必要に応じて医師や管理栄養士などと相談しましょう。
低FODMAP食は、ずっと厳しく制限し続ける食事療法ではありません。一時的に減らしたあと、食品を段階的に戻し、自分に合う食事へ調整していく方法です。
「食べないもの」を増やすより、「食べられる条件」を見つける。
これが、今回いちばんお伝えしたいことです。
お腹の不調を、食品ひとつのせいで終わらせないために
量、組み合わせ、腸の状態、暮らし。
その関係を理解すると、やみくもに避ける以外の選択肢が見えてきます。
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不調が続く場合や、血便・意図しない体重減少などがある場合は、食事の調整だけで様子を見ず、医療機関で相談してください。
その食品を諦める前に、食べ方を知る一歩を。
自分のお腹に合う腸活を、一緒に学んでいきましょう。
NY在住の栄養学博士 いとうゆき