「昔は食事を抜けば、すぐに体重が落ちたのに」
「最近は、こんなに我慢しているのに痩せない」
「更年期だから、もう仕方ないの?」
そんなふうに感じて、さらに食事を減らそうとしていませんか?
その前に、見直してほしいことがあります。
更年期前後の減量で大切なのは、体重を落とすために、どこまで食べずに耐えられるかではありません。
筋肉や体調を守りながら、続けられる食事をどう組み立てるか。
ここを飛ばして制限だけを強めると、目指していた健康から遠ざかってしまうことがあります。
こんにちは。ニューヨークを拠点に、食事と健康についてお伝えしている栄養学博士のいとうゆきです。
今回は、最近サポートしている50代の女性の例を交えながら、更年期前後のダイエットで押さえたいポイントをお伝えします。
食事を抜くことから、3食を整えることへ
この方は、ファスティングなどの極端なダイエットを繰り返すうちに、以前より体重が落ちにくくなったと感じていらっしゃいました。
今回取り入れたのは、ケトジェニックの考え方を取り入れながら、ご本人の生活に合わせて糖質量や食事内容を調整する方法。
目指したのは、「1日3食、満足できる量を食べながら減量すること」です。
そして、6週間で体重は約5kg減。ご本人が目標としている6kg減まで、あと一息となりました。
ただし、この数字だけを見て「私も同じようにすれば、6週間で5kg痩せる」と考えないでください。
これは一人の経過であり、減量幅や適切なペースは、開始時の体格や健康状態によって異なります。また、糖質を減らした初期には、体内のグリコーゲンとともに水分も減るため、落ちた体重のすべてが体脂肪というわけではありません。
注目してほしいのは、数字に加えて、「食事を抜いて頑張る」以外の選択肢があったことです。
① 「痩せにくい=もっと食べてはいけない」ではない
減量すると、体が小さくなる分、必要なエネルギーも少なくなります。さらに、減量に伴ってエネルギー消費が低下する適応も起こります。体重が落ちにくくなったからといって、努力不足とは限りません。
そこへ、更年期前後の変化が重なります。
加齢に伴う筋肉量の減少、閉経に伴うお腹周りへの脂肪のつきやすさ、活動量の変化、睡眠の乱れ。こうした要因を、まとめて見る必要があります。
だからこそ、食事を減らす前に確認したいのは、
たんぱく質を十分に摂れているか
食事制限の反動で間食が増えていないか
疲れて動く量が減っていないか
夜、眠れているか
ということ。
食べる量だけを削っても、見落としている問題は解決しません。
なお、過去のファスティングだけを原因に「代謝が壊れた」と決めつけることもできません。今の食事・活動・体調を整理するところから始めましょう。
② ケトジェニックは「ご飯を抜いて、脂を足すだけ」ではない
ケトジェニックダイエットは、糖質を大きく制限し、脂肪から作られるケトン体をエネルギー源として利用する状態を目指す食事法です。
ただし、糖質を少し減らしただけで、必ずその状態になるわけではありません。「ゆるいケト」という呼び方と、実際にケトーシスになっているかどうかは別です。
そして、ケトン体が出ていれば、何をどれだけ食べても体脂肪が減るわけでもありません。
「糖質が少ないから」と、チーズ、バター、生クリーム、ナッツを際限なく食べる。コーヒーに油を足せば、その分痩せると考える。
それでは、糖質を控えていてもエネルギーを摂りすぎることがあります。
満足して食べることと、無制限に食べることは違います。
見るべきなのは、糖質量だけでなく、たんぱく質、脂質の量と質、食物繊維、そして食事全体です。
実際に、糖尿病・糖尿病予備群の成人を対象とした比較試験では、ケトジェニック食でLDLコレステロールの上昇や食物繊維摂取量の低下が見られました。体重が減っていても、食事の質や検査値の確認は必要です。
③ 50代の減量は、「筋肉まで減らさない」が重要
体重計の数字が減ると、嬉しくなりますよね。
でも、そのときに筋肉まで減らしてしまっては、これからの体力や健康を守る減量とは言えません。
まずは、毎食のたんぱく源を確認してください。
朝はコーヒーだけ。昼はサラダだけ。夜にまとめて肉や魚を食べる。
そんな食べ方なら、「主食をもっと減らす」より先に、食事の組み立てを見直す余地があります。
卵、魚、肉、豆腐などを、食事に合わせて取り入れる。そして、食事と並行して、無理のない筋力トレーニングを行う。更年期前後の体重管理では、たんぱく質と筋力運動によって筋肉を守る視点が大切です。
骨の健康を考え、カルシウムやビタミンDの摂取状況も確認したいところです。
目標は「軽い体」だけでなく、動ける体。
体重に加えて、体力、腹囲、疲れやすさなども見ていきましょう。
④ 糖質を減らしても、「腸の食事」まで減らさない
低糖質の食事で見落としやすいのが、食物繊維です。
主食、豆類、果物などを減らし、その代わりに肉・卵・チーズばかりになれば、食物繊維が不足しやすくなります。
ここで知っておきたいのが、腸内細菌と短鎖脂肪酸の関係。
腸内細菌の一部は、食物繊維などを発酵させて、酪酸などの短鎖脂肪酸を作ります。これは腸の細胞のエネルギー源となるなど、体に関わる働きを担っています。
だから、糖質を調整するときも、野菜、きのこ、海藻、種実類などを、量や体調に合わせて取り入れる工夫が必要です。
ただし、お腹が張りやすい方は、食物繊維を急に大量に増やせばよいわけではありません。
糖質の数字だけに夢中になって、便通やお腹の調子を置き去りにしないこと。
また、「やせ菌を増やせば必ず痩せる」という単純な話でもありません。腸内環境も、食事や生活全体の一部として考えていきましょう。
⑤ 眠れていないなら、食事制限の強化より先にやることがある
夜中に何度も起きる。寝汗で目が覚める。朝から疲れている。
そんな状態で、「もっと食べないように頑張ろう」としていませんか?
更年期前後は、ほてりや寝汗などによって睡眠が乱れることがあります。睡眠やストレスへの対応も、体重管理の大切な要素です。つらい更年期症状は、婦人科などで相談してください。
今日の体重が増えたからといって、明日の食事を抜く必要はありません。
一日の数字に反応して制限を強めるより、数週間の傾向と体調を見る。
減量後半にペースが緩やかになったときも、期限に合わせて無理に削るのではなく、食事・活動・睡眠を点検することが大切です。
ケトが合う人も、別の方法が合う人もいる
今回のクライアントさんには、糖質を調整した食事が、減量を進める選択肢になりました。
でも、すべての50代女性にケトジェニックが最適という意味ではありません。
「あの人が痩せた方法」より、「自分の健康状態と生活に合う方法」を選ぶこと。
例えば、糖尿病の薬を使っている方は、糖質制限に伴って薬の調整が必要になることがあります。特にSGLT2阻害薬の使用中は、極端な糖質制限や長時間の断食がケトアシドーシスのリスクにつながるため、自己判断で始めず、主治医に相談してください。腎臓などに持病がある方も、個別の確認が必要です。
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NY在住の栄養学博士
いとうゆき