「健康のために、毎日、亜麻仁油をかけています」
「植物性だから、ココナッツオイルなら安心ですよね?」
「オメガ6は体に悪いと聞いたので、避けています」
油に気をつかっている方ほど、一度立ち止まってみてください。
「体にいい」と聞いた油を買うことと、健康に役立つ摂り方ができていることは、別の話です。
選ぶ油も、使う量も、加熱の仕方も、保存方法も大切。せっかく高い油を買っても、使い方まで考えなければ、その選択を十分に活かせません。
こんにちは。ニューヨークを拠点に、食事と健康についてお伝えしている栄養学博士のいとうゆきです。
今回は、油を買い替える前に知っておきたい「脂質栄養学の落とし穴」をお伝えします。
① 「いい油を足す」前に、「何と置き換えるか」を考える
健康情報を見て、新しい油を取り入れる。その行動自体は、食生活を見直すきっかけになります。
でも、今までの食事はそのままに、オリーブ油や亜麻仁油を追加するだけになっていませんか?
脂質の摂り方を考えるとき、大切なのは「何を摂るか」に加えて、「何の代わりに摂るか」です。
例えば、バターなどに多い飽和脂肪酸の一部を、オリーブ油や菜種油などに含まれる不飽和脂肪酸に置き換える。こうした置き換えが、心血管の健康を考えるうえで推奨されています。
朝のパンにバターをたっぷり塗っているなら、その一部をオリーブ油に替えてみる。
油を買い足す前に、まずは「今、何から脂質を摂っているか」を見てみましょう。
調理油だけでなく、肉の脂身、乳製品、お菓子なども含めて考えることがポイントです。
② 「植物性だから安心」は、判断が早すぎる
オリーブ油も、菜種油も、ココナッツオイルも植物由来。
でも、含まれる脂肪酸の構成は同じではありません。
ココナッツオイルやパーム油は、植物性でありながら飽和脂肪酸が多い油です。心血管の健康を考える場合、オリーブ油や菜種油など、不飽和脂肪酸を多く含む油と同じ扱いにはできません。
だからといって、ココナッツオイルを一口食べたら問題、という話ではありません。風味を楽しむために使うことと、「健康によさそうだから」と毎日たっぷり摂ることは分けて考えましょう。
「植物性」「自然派」という言葉だけでは、油の栄養学的な特徴まではわかりません。
パッケージの印象より、その中身を知ることが大切です。
③ 「亜麻仁油を摂っているから、魚はいらない」ではない
亜麻仁油やえごま油に含まれるオメガ3と、魚に含まれるオメガ3。
同じ名前で呼ばれますが、主な種類が違います。
亜麻仁油・えごま油:主にα‐リノレン酸(ALA)
魚:EPA・DHA
体内ではALAからEPAやDHAへの変換が行われますが、その変換は限られています。
そのため、「亜麻仁油を摂れば、魚のEPA・DHAまで十分に摂ったことになる」とは言えません。
ここで覚えておきたいのは、同じ「オメガ3」でも、すべてが同じ働き・同じ摂り方ではないということ。
ひとつの油に、食事全体の役割を背負わせないようにしましょう。
④ 「オメガ6は悪者」と決めつけない
一方で、「オメガ6は炎症を起こすから、徹底的に避けるべき」という情報を見かけることがあります。
でも、オメガ6に分類されるリノール酸は、食事から摂る必要がある必須脂肪酸です。
「オメガ6が含まれている」という理由だけで、その油を有害と判断するのは行き過ぎです。米国心臓協会も、オメガ6を含む植物油を、健康的な食事に取り入れられるものとして位置づけています。
揚げ物やスナック菓子ばかりの食生活を見直すことと、家庭で使う植物油をすべて悪者にすることは違います。
「この成分は善、この成分は悪」と覚えるだけでは、かえって選択を間違えます。
⑤ 高い油でも、保存と使い方が雑ならもったいない
油を選ぶとき、商品名や産地は気にするのに、開封後の扱いは自己流。そのようなことはありませんか?
まずは、次の点を確認してみてください。
加熱に使える商品か、表示を確認する
油から煙が出るほどの加熱を避ける
光や熱を避け、商品の保存方法を守る
使用頻度に合った容量を選ぶ
いつもと違う不快なにおいがする油は使わない
米国心臓協会も、油の過熱を避けること、涼しく暗い場所で保存すること、使用頻度が低ければ小さな容器を選ぶことなどを勧めています。
毎日の消費量は少ないのに、「割安だから」と大容量を買う。
そんな習慣も、見直す価値があります。買うときのこだわりを、使い切るまで続けましょう。
「どの油が一番いい?」から、一歩先へ
ここまで読むと、「結局、どれを買えばいいの?」と思われるかもしれません。
そこで大切なのが、油を選ぶための判断軸です。
何が含まれているのか。何と置き換えるのか。どう調理するのか。どのくらい使うのか。
この視点があれば、新しい健康情報が出てきても、商品名や流行だけに振り回されにくくなります。
ご家庭の食事を整えたい方はもちろん、料理やお菓子を教えている方にとっても、「この油を使っています」に加えて、「なぜ、この油を、この使い方で選ぶのか」まで説明できることは、信頼につながるはずです。
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▶︎脂質栄養学★間違わないで!摂りたい油&避けたい油:その理由と使い方
毎日使う油だからこそ、「なんとなく体によさそう」で選ぶのは、そろそろ卒業しませんか?
NY在住の栄養学博士
いとうゆき