その同級生を仮にA君と呼びます。
高2の終わり頃まで、A君の成績は学年でも下位でした。模試の校内偏差値は30台で、学校の課題もほとんど手をつけておらず、高3の春の面談では、進学以外の道を勧められるほどでした。それなのに本人は落ち込む様子がなく、周りが心配するほどでした。
そのA君が、現役で名古屋大学に合格しました。高校3年間の内申の平均は3未満。一方で、学年トップクラスで、東京大学に受かると誰もが思っていた他の同級生は、合格に届きませんでした。(その後1浪して名大に合格。)
成績の順位が高いことと、志望校に合格することは、同じではありません。この出来事を通して考えた、入試の組み立て方についてまとめます。
A君がやっていたこと
A君の動きを、私なりに整理するとこうなります。
照準を、受ける入試に合わせていた。 校内の定期テストや模試の結果は全くと言っていいほど気にせず、志望校の入試(当時はセンター試験と二次試験。現在の共通テストと二次試験にあたります)の得点を最大にすることに集中していました。入試に出ない形式の問題には、ほとんど時間を使っていなかったようです。
科目ごとの「得点の使われ方」を調べていた。 彼が選んだ学部では、センター試験の理科は物理の得点だけが合否に使われ、化学は二次試験で使われる仕組みでした。そこで、センター試験の化学は点数が使われない科目と割り切り、有機化学の分野(約20点分)を最初から学習の対象から外しました。
試験の日程も計算に入れていた。 センター試験の後から二次試験までは、1か月以上あります。彼はその期間で、二次試験に使う化学を仕上げていました。その学部には、二次試験の理科の高得点者を優遇する仕組みもあり、それも見込んでいたのだと思います。
高3の夏休み明けの校内の実力テストでは、学年で150位前後まで順位を上げました。センター試験では合計で8割を超える得点を取り、その後の面談では京都大学を勧められたと言います。
順位や偏差値と、合格は別のもの
模試や定期テストの順位は、全科目・全範囲を均等に見る物差しです。一方、入試は大学や学部ごとに、必要な科目、配点、出題形式が異なります。順位や偏差値は大切な情報ですが、それだけで合否が決まるわけではありません。
共通テストと二次試験の配点比率も、科目の扱いも、大学によって違います。同じ「勉強」でも、どこに時間をかけると合否に結びつくのかは、志望校によって変わります。
今日からできる「逆算」の4ステップ
志望校(候補)の入試要項を一覧にする。 試験科目、配点、出題形式、共通テストと二次試験の比率、日程を書き出します。入試は年度によって変更されることがあるので、最新の募集要項で確認してください。
合格に必要な目標点を、科目ごとに割り振る。 全科目で満点を目指す必要はありません。どの科目で何点取るのかを決めます。
優先順位をつける。 配点が大きい分野や、短期間で得点を伸ばしやすい分野を優先し、後回しにする分野も決めます。後回しは「やらない」ではなく、「いつやるかを決める」ことです。
結果は順位ではなく、「目標点との差」で見る。 模試が返ってきたら、順位や偏差値だけでなく、目標点に対して何点足りないかを確認します。
真似する前に知っておいてほしいこと
A君のやり方は、すべての人に当てはまるものではありません。
1人の例なので、同じやり方で同じ結果になるとは限りません。
「捨てる」判断は、入試の仕組みと自分の得点力を正確に把握しているから成り立ちます。制度を読み違えると、そのまま失点につながります。
入試制度は年度によって変わります。当時の仕組みが、いまの入試でそのまま使えるとは限りません。
志望校や学部によっては、すべての科目をバランスよく仕上げる必要があります。
授業は「最大公約数」になりやすい
学校の授業や集団の授業は、多くの生徒に共通する内容を扱うため、どうしても「最大公約数」的な内容になります。それ自体は悪いことではありませんが、自分の入試に必要な内容と、完全には重なりません。
だからこそ、授業を受けるときも、「これは自分の志望校の入試に必要か」「いま、どのくらいの優先度か」と、自分で意識して取り組めるかどうかが、大きな鍵になると私は考えています。A君は、それを高校生の時点で自力で実行していました。
まとめ
順位や偏差値が高いことと、志望校に合格することは、同じではない
入試の科目・配点・形式・日程から逆算して、勉強の優先順位を決める
「捨てる」は、配点と目標点から決めた判断。真似する前に、最新の入試要項で確認する
まずは、志望校の入試要項を、一度自分の手で一覧にしてみてください。「何をやるか」と同じくらい、「何を後回しにするか」を決めることが、受験の組み立ての第一歩になります。
受験の戦略について細かいアドバイスが必要な場合は、お気軽にお問い合わせ下さい。