パンのレシピの塩は、たったの5gほど。
粉250gに対して5gなので、全体のごく一部です。
「入れ忘れても、ちょっと味が薄いだけでしょ?」と思いますよね。
ところが、塩を忘れたパンは、味以前に見た目から違うものになります。
生地がだらんとゆるみ、成形しても横に広がり、味はぼんやり。
実際にやってしまった時は「ま、まずい・・・」と、思わずつぶやいてしまいました。
この数gが何をしているのか。
知っておくと、塩を減らしたいときの判断もできるようになります。
塩の仕事その1:生地を引き締める
いちばん大きいのがこれです。
塩には、グルテン(小麦のたんぱく質が水とこねられてできる網目)を引き締める働きがあります。
塩が入ると生地にコシが出て、指で押しても戻ってくるような弾力が生まれます。
逆に塩を入れないと、網目がゆるゆるのまま。
ガスを抱え込めないので、発酵で膨らんでもすぐしぼみ、焼いても平べったくなります。
「成形してもだれてしまう」「なんだか生地がベタベタする」というとき、
実は塩の入れ忘れ、ということが意外とあります。
塩の仕事その2:発酵のペースを整える
塩には、イーストの働きをゆるやかにする力もあります。
「え、じゃあ邪魔してるの?」と思われるかもしれませんが、
これがちょうどいいブレーキになります。
塩なしだとイーストが暴走ぎみに発酵して、あっという間に膨らんで、あっという間にしぼみます。
生地がゆるむのと重なって、まとめるのも難しくなります。
塩が入ることで発酵がゆっくり進み、「ちょうどいいタイミング」の幅が広がるんです。
つまり塩は、初心者さんにとってはむしろ味方。
失敗しにくくしてくれる材料です。
塩の仕事その3:味を決める
もちろん味も大事な仕事です。
ただ、塩けをつけるというより、小麦の甘みや香りを引き出すのが役割です。
塩を抜いたパンを食べると、「しょっぱくない」ではなく「味がない」と感じます。
甘みも香りもぼんやりして、何を食べているのか分からない感じ。
ほんの2%が、パンの輪郭を作っているわけです。
目安は「粉に対して2%」
レシピにグラムで書いてあるならそのとおりで大丈夫ですが、
目安を知っておくと安心です。
粉200g → 塩3〜4g
粉250g → 塩4〜5g
粉300g → 塩5〜6g
1%を切ると、だれやすく味もぼやけます。
逆に2.5%を超えると、発酵が目に見えて遅くなります。
狙いたいのは2%前後の範囲、ということです。
塩は「イーストと離して」入れる
もうひとつ、覚えておくと得することがあります。
塩とイーストを、ボウルの中で直接くっつけて置かないでください。
塩は水分を引き寄せる力が強いので、直接触れているとイーストから水分を奪って弱らせてしまいます。
数分ならさほど影響はありませんが、材料を並べてから他の作業をして……となると、じわじわ効いてきます。
対策は単純で、粉を入れたボウルの、右端に塩・左端にイーストと離して置くだけ。粉と軽く混ぜてから水を加えれば、もう心配ありません。
塩の種類は? 最初は家にあるもので十分
「パン用の塩」を買う必要はありません。家にある食塩で問題なく焼けます。
ただ、知っておくと面白いのは、塩は種類で味が変わるということ。精製塩はすっきりした塩け、海塩はにがり由来のうまみが乗ります。具材の少ないシンプルなパンほど、この差が出ます。
もうひとつ気にするとすれば粒の大きさです。粗い岩塩は短いこね時間だと溶けきらず、塩けがまだらになることがあります。細かい粒のものを選ぶと安心です。
パン作りに慣れてきたら、塩を変えてみると発見があります。
まとめ
塩は味だけでなく、生地を引き締めて発酵を整える材料
抜くと、だれる・しぼむ・味がぼやけるの三重苦
目安は粉に対して2%(粉250gなら5g)ほど。
イーストとは離して入れる
塩の種類は家にあるもので十分。慣れたら変えてみると面白い