「会社ではTOEICを求められるのに、社会人が英検2級を取る意味はありますか?」
と言う質問をたまに受けます。
私は、英語の基礎に不安があり、仕事や会話で英語を使えるようになりたい社会人には、TOEICの点数だけを追うより、まず英検2級合格を目指すほうがメリットが大きいと考えています。
理由は、読む・聞く力に加えて、自分の考えを整理し、順序立てて書き、話す練習まで、一つの合格目標に向かって取り組めるからです。
英語の知識を増やしながら、その知識を使って相手に分かりやすく伝える力も育てる。ここに、社会人が英検2級を目指す大きな価値があります。
TOEICは、多くの企業で採用や昇進・昇格などの判断材料として活用されています。会社からスコアを求められる社会人にとって、重要な試験です。www.iibc-global.org
そのうえで、自分の英語力をどの順番で育てるかも考えていただきたいのです。
「単語や文法が曖昧」「短い英文も自分では作れない」「英語で質問されると答えが出てこない」。
こうした課題がある方には、点数を上げるための対策を増やすより、英検2級合格に向けて英語の土台を整える学習のほうが、先に必要だと私は考えています。
今回は、その理由を5つに分けてお伝えします。
こんにちは。英語講師のTaka先生・根岸貴規です。私は日本国内で教科書の音読を中心に英語を身につけ、その英語を使って外資系投資銀行で約20年間働いてきました。英検1級・TOEIC980点を取得し、これまで累計14,000人以上の方に英語学習を指導してきました。ストアカでは、2022年から2025年まで4年連続で「最多受講者賞」を、2025年には「ストアカン・オブ・ザ・イヤー」をいただきました。
目次
■ 採用面接で感じたこと|「TOEICで800点を超えていれば、英語で話せる?」
私が外資系投資銀行で採用面接を担当していたとき、TOEICで800点を超えていても、英語ではあまり話せない方がいました。
この経験から私が感じたのは、スコアに表れる英語力に加えて、その場で自分の考えを相手に伝える力にも目を向ける必要がある、ということです。
相手の質問を理解する。
何を答えるか、自分の考えを整理する。
相手が理解しやすい順序で、言葉にする。
仕事で英語を使う場面では、この一連の力が求められます。
TOEICで高得点を取るために積み重ねた学習には価値があります。その土台を、実際に書く・話す練習へつなげることが大切なのです。
だからこそ、英語を学び直す段階から、自分で英文を作り、考えを伝える練習を組み込んでほしいと思っています。
英検2級は、そのための目標として活用しやすい試験です。
■ 比較する試験|「TOEICと英検2級は、何が違う?」
この記事で比較するTOEICは、TOEIC Listening & Reading Test、以下「TOEIC L&R」です。
TOEIC L&Rは、聞く・読むの2技能を測る試験です。公開テストはマークシート方式で、選択肢から答えを選びます。www.iibc-global.org
一方、英検2級では、読む・聞く・書く・話すの4技能が問われます。英文要約や意見を書く問題があり、スピーキングでは内容の説明や自分の意見を伝えます。www.eiken.or.jp
なお、TOEICにも、話す・書く力を測るTOEIC Speaking & Writing Testsがあります。L&Rと組み合わせれば4技能を測定できます。www.iibc-global.org
ここでは、TOEIC L&Rのスコアアップを目標にする場合と、英検2級合格を目標にする場合の、学習の進め方を比べています。
会社に提出するスコアの期限が迫っている方は、その条件への対応を優先してください。英検2級合格が、指定されたTOEICスコアの代わりになるとは限りません。
その条件を踏まえたうえで、基礎から英語を学び直す目標として、私は英検2級を勧めています。
■ 理由①|「書く・話す練習を、後回しにしにくいから」
英語を勉強していても、「話す練習は、もう少しできるようになってから」と考えてしまうことがあります。
単語を覚え、文法問題を解き、英文を読む。それは大切です。しかし、その学習だけを続けていると、自分で英文を作る練習を始めるきっかけがないまま、時間が過ぎることもあります。
TOEIC L&Rは、読む・聞く力を確かめる試験です。そのスコアだけでは、本人がどのような英文を書き、どのように話せるかまでは直接確認できません。
英検2級では、書く・話す課題にも取り組む必要があります。
そのため、合格を目指す学習の中に、次のような練習を組み込みやすくなります。
① 自分の考えを短い英文にする。
② 考えを支える理由を付ける。
③ 質問を聞き、声に出して答える。
④ 伝わらなかった表現を直し、もう一度言う。
もちろん、TOEIC L&Rの教材でも、自分から音読や作文を取り入れることはできます。
英検2級のよさは、書く・話す力を試験でも問われるため、その練習を合格までの予定に入れる理由が明確なことです。
仕事で英語を使いたい方にとって、これは大きなメリットだと私は考えています。
■ 理由②|「単語・文法を、自分で使えるか確かめられるから」
「解説を読むと分かるのに、自分では言えない」
この状態を変えるには、覚えた知識を自分で取り出す練習が必要です。
例えば、次の英文を読めば意味が分かる方は多いでしょう。
We need to change the schedule.
「私たちは予定を変更する必要があります」
では、英文を見ずに「私たちは予定を変更する必要があります」と言ってみてください。
need to が出てこない。change を思い出せない。単語は分かるのに、順番に並べられない。
実際に自分で言おうとすると、まだ使える状態になっていない部分が見えてきます。
英検2級の英作文やスピーキングに向けて練習すると、こうした課題に向き合う機会をつくれます。
覚えた単語を、自分の文で使う。
習った文法を使って、理由を説明する。
理解した英文を、見ないで言ってみる。
この練習を通じて、単語や文法を「意味が分かる知識」から「必要なときに使える知識」へ近づけていくのです。
私が大切にしている学習の段階は、①分かる、②できる、③忘れない、の3つです。
解説を理解したら、音読・書き取り・短い英作文で再現する。そして、日を変えて繰り返す。
英検2級を目標に、この3段階を丁寧に進めていただきたいと思います。
■ 理由③|「考えを整理し、論理的に伝える発信力を磨けるから」
私が社会人に英検を勧めるうえで、特に重視しているのがライティングです。
仕事では、英語の文法が正しいだけでは、伝えたいことが十分に伝わらない場合があります。
何を言いたいのか。
なぜ、そう考えるのか。
その理由を支える具体的な説明はあるか。
これらが整理されていると、相手は内容を理解しやすくなります。
英検の英作文では、「内容」「構成」「語彙」「文法」の4つの観点で評価されます。意見を支える理由や、文章の筋道が分かりやすく通っているかも評価の対象です。公益財団法人 日本英語検定協会
つまり、英作文の学習では、単語や文法の確認とともに、自分の考えをどう組み立て、どの順序で伝えるかにも向き合えます。
例えば、オンライン会議の便利さを説明する練習なら、次のように考えます。
① 結論:自分はどう考えているのか?
I think online meetings are useful.
「オンライン会議は便利だと思います」
② 理由:なぜ、そう考えるのか?
One reason is that they save travel time.
「理由の一つは、移動時間を節約できることです」
③ 具体例:相手がイメージできる説明はあるか?
For example, people in different cities can join the same meeting without traveling.
「例えば、異なる都市にいる人たちが、移動せずに同じ会議に参加できます」
このように、「結論→理由→具体例」と順序立てると、伝えたい内容が明確になります。
英検のライティングに取り組むときも、書いた後に「理由は自分の意見を支えているか」「説明が飛んでいないか」「初めて読む人にも伝わるか」と見直してください。
私は、この確認と書き直しを繰り返すことが、論理的に伝える力を磨く練習になると考えています。
そして、書いた内容を、今度は原稿を見ずに短く話してみる。
この練習を合わせると、書くときに整理した考えを、口頭でも伝える練習につなげられます。面接、会議での発言、提案や説明などに生かすための準備になります。
単に「英語ができるかどうか」という見方から一歩進み、「英語で相手に何を、どのように伝えられるか」を磨く。
この意味で、英検のライティングとスピーキングは、英語によるコミュニケーションの発信力を高めるために活用できると私は考えています。
■ 理由④|「基礎から、どこまで身につけるかを決めやすいから」
英検2級は、日本英語検定協会が「高校卒業程度」と位置づけている級です。www.eiken.or.jp
ここで、「高校卒業程度なら、社会人には必要ない」と考えるのは、少しもったいないと思います。
高校で習った単語や文法を、今でも使えるでしょうか。
社会的な話題の英文を、内容を理解しながら読めるでしょうか。
自分の意見を、短くても英語で書き、話せるでしょうか。
「昔習った」と「今できる」は、同じではありません。
英検2級を目標にすると、過去問やサンプル問題を使い、目指す課題の難しさを確かめながら学習できます。
単語が分からなければ、語彙を増やす。
英文の構造が分からなければ、文法に戻る。
読めても聞けなければ、音声と文字を照らし合わせる。
説明できなければ、短い文を作る練習をする。
私が大切にしている順序は、単語・文法、英文を正確に読む練習、音読、リスニング、そして書く・話す練習です。
理解できる短い英文から、この流れを繰り返していきます。
2級の問題が難しすぎる場合は、中学英文法や3級・準2級など、自分に必要なところへ戻って構いません。
目標は2級合格。出発点は、今の自分に合わせる。
このように学習を組み立てることで、「何となく英語を勉強している」という状態から進みやすくなります。
■ 理由⑤|「合格を、その先のTOEICや仕事につなげられるから」
英検2級に合格すると、学習の成果を資格として残せます。
履歴書にも、「実用英語技能検定2級 合格」と記載できます。仕事や家事と両立しながら勉強を続けた方にとっては、「自分も英語を身につけられる」という自信につながることもあるでしょう。
そして、そこで育てた語彙・文法・読解・リスニングの力は、その後のTOEIC L&R学習にも生かせます。
TOEIC L&Rで目標スコアを取るには、出題形式や時間配分に慣れる練習、必要な語彙の追加などが別に必要です。英検2級に合格すれば、特定の点数が自動的に取れるという意味ではありません。
それでも、英文の意味を正確に理解できる土台があれば、問題演習の解説から学び取れることが増えます。
私が勧めたいのは、次のような進め方です。
① 英検2級を目標に、4技能の基礎を整える。
② 会社が求めるTOEICスコアに向けて、必要な対策を加える。
③ 自分の仕事で使う表現や専門用語を練習する。
会社の期限や現在の英語力によって、並行して進めても構いません。
英検2級を、将来の仕事や学習につながる通過点として使う。その考え方なら、資格のために費やした時間を、その後にも生かせます。
■ 私が社会人に英検2級を勧める理由|「資格を取った後、何ができるようになりたい?」
私は、高校時代に国内で教科書の音読を中心に身につけた英語を使って、外資系投資銀行で約20年間働いてきました。
実務や採用面接を経験してきたからこそ、英語を学ぶ方には、相手の話や文章を理解し、自分の考えを筋道立てて伝える力まで育てていただきたいと思っています。
会社が求めるTOEICスコアを取得することは、大切な目標です。
そして、英語の基礎に不安がある方には、その目標に向かう過程で、書く・話す練習まで含めて取り組める英検2級合格を勧めたいのです。
私が「TOEIC L&Rの点数だけを追うより、英検2級合格を目指すほうがメリットがある」と考えるのは、この学習の中身に理由があります。
単語や文法を覚えた先に、自分の考えを整理して書く。そして、相手に伝わるように話す。その練習を、合格までの学習に含められることを重視しています。
英語でメールを書きたい。
外国人のお客様に、自分の言葉で説明したい。
英語を使う仕事にも挑戦できるようになりたい。
その希望に向けて、まずは次の一文を言ってみてください。
I want to explain my ideas in English.
「自分の考えを英語で説明できるようになりたいです」
want to の後に、できるようになりたい行動を置いています。explain my ideas を write emails に変えれば、「英語でメールを書けるようになりたいです」と言えます。
あなたは、英語を使って何ができるようになりたいですか?
その答えを、今日の学習につなげてください。
英検2級合格を、英語を自分の仕事と人生に生かすための一歩にしていきましょう。
参考資料
IIBC
将来の進路や仕事に役立つTOEIC Program
TOEIC Listening & Reading Testとは
TOEIC Programとは
日本英語検定協会
2級の試験内容
2級の過去問・試験内容
ライティングテストの採点に関する観点および注意点
根岸貴規
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