はじめまして、西部直樹です
N&Sラーニングの西部直樹です。「コミュニケーションモチベーター」として、ロジカルシンキング、ディベート、論理的なプレゼンテーション、論理的な文章の書き方などを教えています。企業研修の講師として30年以上、東京大学やお茶の水女子大学などで非常勤講師も務めてきました。ディベートの本も何冊か書いています。
この記事では、これから連載で「明日から職場で使えるコミュニケーションのテクニック」をお伝えしていきます。難しい理論ではなく、明日の会議、報告、メールですぐに試せることを中心にします。
コミニュケーションのテクニックの前にどうしても押さえておきたい「前提」の話です。
「ちゃんと説明したのに…」はなぜ起きるのか
こんな経験はありませんか。
- 上司に報告したら「で、何の話?」と言われた
- 丁寧に引き継いだつもりなのに、後任者が同じところでつまずいた
- メールで依頼したのに、まったく違うものが返ってきた
相手の理解力が足りないのでしょうか。たいていは違います。原因は、話し手と聞き手が持っている情報の量が違うことにあります。
これを「情報の非対称性」と呼びます。
話し手は知っている、聞き手は知らない
話し手は、その話の背景も、経緯も、言いたい結論も、すべて頭の中に持っています。そのため、自分の説明を聞き直すと「わかりやすい」と感じてしまいます。抜けている情報を、自分の頭が自動的に補ってしまうからです。
ところが聞き手は、その情報を持っていません。話し手が口にした言葉だけが手がかりです。
「例の件、A社の方向で進めます」
話し手にとっては完璧な報告です。でも聞き手は「例の件」がどれなのか、「A社の方向」が何を意味するのか、そもそもなぜその判断なのかを知りません。
伝わらないのは、説明が下手だからというより、この差に気づいていないからなのです。
明日からできる3つのこと
① 「相手は何を知っているか」から考える
話す前に、「この人は、この件についてどこまで知っているか」を一度だけ考えてみてください。自分が知っていることではなく、相手が知っていることを起点にするだけで、説明の入り方が変わります。
② 前提を一言、先に置く
「先週ご相談した、新規取引先の件です」
この一言があるだけで、聞き手は話を受け取る準備ができます。結論の前に、何の話なのかを一言添える。それだけで「で、何の話?」はかなり減ります。
③ 「わかっているはず」を疑う
同じチーム、長い付き合い、前にも話した…。こういう相手ほど、「わかっているはず」と思い込みがちです。でも人は忘れますし、同じ言葉を違う意味で受け取っていることも珍しくありません。親しい相手ほど、一度確認してみましょう。
まとめ
コミュニケーションのテクニックは数多くありますが、すべての土台にあるのは「相手は、自分が知っていることを知らない」という前提です。
この前提を押さえておくだけで、報告も、依頼も、プレゼンも、ずっと伝わりやすくなります。まずは明日、誰かに何かを伝える前に、「この人は何を知っているだろう」と一瞬だけ考えてみてください。