第三章:神々の慈悲深い設計
「よし、では人間たちに新しい力を授けよう」と、神々はお決めになりました。
「ただし」と、一番年長の神様が仰いました。「ただ能力に凸凹をつけるだけでは可哀想じゃ。苦手なことばかりやらされては、人間たちが辛かろう」
「では、どうなさいますか?」
「簡単なことよ。その者が最も得意なことを、最も好きなことにしてやるのじゃ。そうすれば、得意なことをしているときは楽しくて仕方がない。苦もなくできるから、疲れることもない」
「おお、それは素晴らしい!」
「田を耕すのが得意な者には、土の匂いや青空の下で働くことを心から愛させよう。魚を獲るのが得意な者には、波の音と潮風を何より好ませよう。機を織るのが得意な者には、糸の手触りと美しい模様を作り出すことに夢中にさせよう」
神々は手分けして、人間たち一人一人に、それぞれ違った『好きで得意なこと』を授けることにしたのです。
「これで皆、自分の好きなことをしながら、みんなのために働ける。なんと美しい仕組みじゃろう」
第四章:奇跡的な変化
神々がその力を人間たちに授けた日から、世界は見違えるように変わりました。
田郎という青年は、朝目覚めると土の匂いが恋しくて仕方がなくなりました。田んぼに向かう足取りは軽やか、鍬を握る手には不思議な力が宿り、見る見るうちに美しい田んぼを作り上げます。一日中働いても疲れるどころか、ますます元気になるのです。
漁師の海太は、波の音を聞くだけで心が躍りました。舟を出せば魚たちの居場所が手に取るようにわかり、面白いように大漁が続きます。「こんなに楽しい仕事があっただろうか」と、毎日が祭りのような気分でした。
機織りの綾女は、糸に触れると指先から魔法が流れ出すかのようでした。美しい模様が次々と浮かび、一反織る間に新しい図案が三つも思い浮かびます。
不思議なことに、皆が自分の好きなことに集中するようになると、村全体の暮らしが豊かになりました。田郎の米は以前の三倍も実り、海太の魚は市場でも評判となり、綾女の布は隣の村からも注文が来るほどでした。
好きなことをすれば、ずっと効率良く仕事ができるのです。疲れることもなく、どんどん上達し、結果として全ての生産性が上がって、村全体が豊かに発展していきました。
「これは素晴らしい」と神々も大喜び。「それぞれが好きなことをするだけで、みんながこんなに幸せになるとは」
好きで得意なことをして、皆が笑い、村が豊かになっていく。
めでたし、めでたし……と申したいところでございますが、
物語はここで終わりではございません。
次回、人間たちの間に、妙な声が聞こえ始めます。
第五章「人間たちの混乱」・第六章「苦労教の誕生と広がり」へと続きます。