こんにちは、株式投資講師の神谷拓です。
企業分析と聞くと、PER、PBR、ROE、ROAなど、難しい数字をすべて覚えなければいけないと思っていませんか。私も投資を始めた頃は、指標を一つ覚えるたびに投資法を変え、長い間結果を出せませんでした。
企業分析で最も重要なのは、現在の数字が良い企業を探すことだけではありません。企業の利益がこれからどう変化するのか、その変化がなぜ起き、今後も続くのかを調べることです。この記事では、私自身の失敗談を交えながら、その考え方をお伝えします。
なぜ企業分析は難しく感じるのか
私は投資歴20年と聞くと、すごい投資家のように見えるかもしれません。しかし、そのうち10年以上はほとんど利益を出せない「ダメ投資家」でした。
一時期は資金が底をつき、投資を諦めかけたこともあります。それでも株が好きだったので、結局は株式市場へ戻ってきました。
投資を続ける中で、本当にたくさんの本を読みました。本を開くと、PER、PBR、ROE、ROA、移動平均線、MACD、トレンドラインなど、数え切れないほどの専門用語が出てきます。投資本は著者によって方法が違い、人の性格や投資期間によっても合う方法は変わります。一般的な指標を一つ覚えただけで、安定した判断ができるほど単純ではありませんでした。
指標が良い企業を買っても、株価が上がらなかった理由
本でPERを知った私は、「PERが低い割安株が良いんだ」と考えました。低PER銘柄ランキングの上位企業を買い、「これで私も投資家だ。お金が増えるのが楽しみだな」とワクワクしていました。
もちろん、期待どおりにはなりませんでした。PERで失敗すると、今度はROE、それでも駄目なら移動平均線というように、次々と手法を変えました。
ある投資本に「機関投資家はROE10%以上の企業を見る」と書かれていたので、ROE10%以上、なかには20%、30%の企業も買いました。しかし株価はなかなか上がらず、損切りする結果になりました。営業利益率が高い企業、PBRが低い企業なども試し、一通り試して、ほぼ全敗したのが私です。
なぜうまくいかなかったのか。ROE10%や営業利益率30%という「現在の数字」は、すでに多くの投資家が知っており、株価にも反映されている場合があるからです。
私が失敗の中から辿り着いた、ほかの投資家との差を生む要素は「企業の利益変化」でした。
株価はなぜ上がるのか
企業分析を始める前に、「なぜ株価は上がるのか」を考える必要があります。株価には金利、市況、需給、投資家心理など、さまざまな要素が影響します。短期的な株価は、その日のニュースや投資家心理で大きく動きます。
しかし中長期で企業価値を支える重要な要素は、企業が生み出す利益です。利益が伸びれば必ず株価が上がるという単純な話ではありません。すでに高い成長が株価へ織り込まれている場合もあります。それでも、企業の利益とその変化を抜きに、中長期の株価を考えることはできません。
「利益変化」とは何を見ればいいのか
利益変化とは、会社の利益予想が上方修正されることや、利益成長率が従来の見込みより加速すること、利益率が改善することです。現在の数字ではなく、以前の予想や実績から「何が変わったか」を見ます。
具体例で考えてみましょう。
・A社:売上高営業利益率30%を毎年安定して維持している
・B社:売上高営業利益率が現在5%、翌年度10%、翌々年度15%へ改善する見込み
どちらを先に詳しく調べるか、5秒だけ考えてみてください。
A社は高い利益率を安定して出す優良企業です。一方、私は企業価値の変化を探すとき、B社を優先して調べます。B社には、利益率が5%から15%へ改善するという大きな変化があるからです。
ここでいう5%、10%、15%は「利益率」であり、「利益成長率」とは別の数字です。ただし、売上が同じでも利益率が改善すれば利益額は増えるため、企業価値が見直されるきっかけになります。
A社が悪い企業という意味ではありません。すでに高収益企業として評価されている可能性があるため、株価がさらに評価されるには、高い利益率を維持するだけでなく、新しい成長材料が必要になります。
利益変化の理由はどこで確認するか
決算資料や決算説明資料を読み、なぜ利益率や利益成長率が変化したのかを確認します。販売数量、値上げ、原価低下、製品構成、新規事業、大型受注など、利益を変えた具体的な理由を探します。
その理由が一度だけのものか、次の四半期以降も続くのかも考えます。利益率が改善していても、資産売却など本業以外の要因なら、同じ成長が続くとは限りません。
企業分析を進める順番
私が確認する順番は、市況→セクター→企業です。企業分析だけが正しくても、市場全体や業界に強い逆風があれば、株価は思うように動かないことがあります。
企業を見る段階では、最も利益に貢献している事業、その事業の利益率と成長率、成長した理由、理由の継続性を確認します。最後にチャートで株価の位置を見ます。
まとめ:企業分析で自分に問う3つのこと
・最も利益に貢献している事業は何か
・利益率や利益成長率にどんな変化が起きているか
・変化した理由は次の決算でも続きそうか
現在のPER、ROE、利益率が良いだけで企業を決めないことです。指標は企業を比較する入口ですが、株価評価を変える可能性があるのは、数字の変化と、その変化を生んだ具体的な理由です。
私が長い失敗の末に学んだのは、指標を次々に乗り換えることではありませんでした。企業の利益がどう変化し、その理由が続くかを、自分の言葉で説明できるようにすることです。
企業分析は数字をたくさん暗記する作業ではありません。数字の裏側で何が起きているかを調べる作業です。まずは気になる企業1社で、この3つの質問を試してみてください。
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買や投資手法を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の見解であり、将来の運用成果を保証するものではありません。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任で行ってください。