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子どもが独立した後、特等室は誰のもの?|使わなくなった子ども部屋と、これからの夫婦の暮らしを考える

子どもが独立した後、特等室は誰のもの?|使わなくなった子ども部屋と、これからの夫婦の暮らしを考える

子どもが独立した後、特等室は誰のもの? これからの暮らしと住まいの話

子どもたちが独立して、家を出ていった。

あんなに賑やかだった家が、いつの間にか静かになりました。

子どもたちが使っていた部屋には、机やベッドがそのまま残っている。

「いつでも帰ってこられるように」

そんな思いから、部屋をそのままにしているご家庭も多いのではないでしょうか。

でも、ちょっと考えてみてください。

その部屋、今はどのくらい使っていますか?

子どもたちが帰ってくる場所を残したい

Facebookで住まいについて発信していると、こんな声をよく目にします。

「子どもたちが帰ってくる場所を残しておきたい」

特に、子どもや孫が帰省してくることを楽しみにしている方にとって、家は単なる建物ではありません。

家族の思い出が詰まった場所であり、子どもたちがいつでも帰ってこられる場所でもあります。

その気持ちは、よくわかります。

ただ、私自身の経験を振り返ると、少し違った見方もできるように思うのです。

我が家も、孫が小さい頃は帰ってくるのが楽しみでした。

でも、孫も成長し、成人する頃になると、帰ってくる機会も少しずつ減ってきました。

私自身も、子どもを連れて実家に帰省したとき、昔の自分の部屋ではなく、客用の座敷に家族で布団を敷いて泊まっていました。

そう考えると、子どもたちが帰ってくる場所を残すことと、かつての子ども部屋をそのまま残すことは、必ずしも同じではないのかもしれません。

家族が集まれる場所は必要でも、昔と同じ部屋の使い方を続ける必要があるとは限らないのです。

その家、誰が維持していますか?

以前、転居計画のお手伝いをした友人がいます。

ご主人のご両親と4人のお子さん、合わせて8人で暮らすために建てた3階建ての家でした。

ご両親を見送り、お子さんたちも独立。

家族構成は大きく変わりましたが、家はそのままです。

そんなある日、友人が言いました。

「どうして、私が3階まで上がり降りして掃除機かけんといかんの?」

思わず笑ってしまいましたが、切実な言葉ですよね(笑)。

8人家族だった頃には必要だった広さも、夫婦二人になれば事情が変わります。

使っていない部屋にも掃除が必要です。階段の上り下りもあります。家の規模によっては、光熱費や維持管理の負担も大きくなります。

もちろん、大きな家で暮らすことが幸せな方もいらっしゃいます。

でも、もし家を維持するために、今の自分たちの暮らしが窮屈になっているとしたら?

一度、立ち止まって考えてみてもいいのではないでしょうか。

ところで、特等室は誰のもの?

ここで、建築士として気になることがあります。

家を設計するとき、日当たりのいい南向きや、朝日が入る東向きの部屋を子ども部屋にされるご家庭は少なくありません。

子どもたちに、気持ちのいい部屋で過ごしてほしい。

親心として、よくわかります。

ところが、10年後。

子どもたちは独立し、かつての子ども部屋が納戸になっている。

その一方で、夫婦は相変わらず北側や西側の部屋で過ごしている……。

そんな住まいを目にすることがあります。

もちろん、部屋の快適さは日当たりだけでは決まりません。暑さや眩しさ、風通し、窓からの景色、生活時間などによっても違います。

それでも、私は思うのです。

どうせなら、夫婦にも特等室で暮らしてほしい!

子どもたちが小さい頃は、家族みんなのために住まいを考えてきたことでしょう。

でも、子どもたちが独立した後は、夫婦自身の暮らしをもっと大切にしてもいいのではないでしょうか。

使わなくなった部屋を、趣味の部屋や仕事部屋に変えるのもいい。

思い切って、夫婦が気に入った部屋に移るのもいい。

今の家が広すぎるなら、住み替えを考える方法もあります。

家族のために家を建てたからといって、これからもずっと、自分たちの希望を後回しにする必要はないと思うのです。

家族の変化と住まいの間取り

空いている部屋が、物置になっていませんか?

使わなくなった部屋について、もうひとつ気になることがあります。

それは、いつの間にか物置になってしまうこと。

「とりあえず、ここに置いておこう」

空いている部屋があると、そんなふうに考えやすくなります。

今は使わないけれど、いつか使うかもしれない物。
捨てるには惜しい物。
子どもたちが置いていった物。

気がつけば、部屋いっぱいに物が増えている……。

空間に余裕があること自体は、悪いことではありません。

でも、使わない物を置くためだけに部屋を維持しているとしたら、少しもったいない気がします。

部屋があるから物が増えるのか、物があるから部屋が必要なのか。

そんなことも、考えてみたくなります。

これからの暮らしに、今の住まいは合っていますか?

家族の人数が変われば、必要な部屋数も変わります。

子育て中には必要だった広さが、夫婦二人の暮らしには大きすぎることもあります。

反対に、趣味や仕事を楽しむために、今までとは違う空間が欲しくなることもあるでしょう。

住み慣れた家には、思い出があります。

だから、無理に変える必要はありません。

子どもたちの部屋を残しておくのも、今の家に住み続けるのも、もちろん立派な選択です。

私自身も、暮らしを見直して、以前より小さな住まいに移りました。

でも、それが誰にとっても正解だとは思っていません。

大切なのは、広い家に住むことでも、小さな家に住むことでもなく、今の自分たちに合った暮らしができているかどうかではないでしょうか。

建築士として、住まいに関わってきました。

家は、建てたときが完成ではありません。

そこに暮らす人の人生が変われば、住まいに求めるものも変わっていきます。

だからこそ、ときどき考えてみてほしいのです。

今の家で、本当に心地よく暮らせていますか?

使っていない部屋を、これからどうしたいですか?

そして、これからの人生で、どんな時間を大切にしたいですか?

子どもたちのために残す部屋も大切。

でも、これからの自分たちのために使う部屋も、同じくらい大切です。

家族のためにつくった住まいを、これからは自分たちの人生を楽しむためにも使ってみませんか?

そんなことを考えるきっかけになれば、うれしく思います。

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この記事を書いた先生
岡部 早苗 シルバーバッジ
100件以上の住宅を設計してきた1級建築士
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「建物も人も泣かない住まいづくり」を伝えたい——。 あしすと設計一級建築士事務所代表。 住宅設計に携わって40年以上、現場監督経験15年、 建築施工中に第3者としてする建物検査を1,000件以上行ってきました。 また、プライベートでは、4人の子育てと母の介護を経験し、…

岡部 早苗