同じAIを使い、同じテーマに1時間向き合う。それでも、仕事が形になる人と、やり取りを重ねるだけで終わってしまう人がいます。
私は、その違いを考えるうえで、「受け取った情報を構造化し、AIに渡す力」が非常に重要だと考えています。
はじめまして。株式会社EFFECTのシュ コウメイです。ストアカでAI活用を教えながら、仕事の進め方や、AIと一緒に働く仕組みをつくっています。
自己紹介として、私がこれからの時代に欠かせないと考えている力を、一つだけお伝えします。それが「構造化スキル」です。
言葉にした情報を、構造として捉える
考えや出来事を言葉にする「言語化」。私は、その次の一歩として、言葉になった情報を分け、関係を整理する力に目を向けています。
例えば、相手から次のような相談を受けたとします。これは説明用の例です。
「来月から新しいサービスを案内したいんです。今のお客様にも伝えたいけれど、初めての人にも知ってほしい。ただ、まだ料金が決まっていなくて。まず社内で案内の方向性を相談する資料が必要です」
会話では、目的、対象、未確定のこと、今やってほしいことが、ひと続きで届きます。話した順番と、仕事を進めるために整理すべき順番は、必ずしも同じではありません。
これを、次のように分けて受け止めます。
目的:来月、新しいサービスを案内する
対象:既存のお客様と、初めて知る人
未確定:料金
今の作業:案内の方向性を相談する社内資料をつくる
さらに、情報同士の関係を確かめます。「既存のお客様と新規の方では、説明の前提が違う」「料金が未確定なので、確定した価格として書けない」「今必要なのは公開用の告知ではなく、社内で判断する資料だ」と捉えられます。
このように、情報を小さく分け、その意味とつながりを捉え直すことを、私は構造化と呼んでいます。
構造化した内容が、そのままAIへの指示になる
先ほどの相談を「新サービスの資料をつくって」とAIに渡したら、何が起きるでしょうか。
誰が読む資料なのか。何を決めるための資料なのか。料金をどう扱うのか。指示にない部分を、AIに補わせることになります。
一方、相談を構造化できていれば、次のように指示できます。
「来月案内する新サービスについて、案内の方向性を相談する社内資料の構成案をつくってください。対象は既存顧客と新規顧客の二つに分け、それぞれに必要な説明を整理してください。料金は未確定なので、金額を作らず『要確認』としてください。サービス内容の不足情報は、先に質問してください」
特別な言い回しを覚えたわけではありません。相手の話を分けて理解し、目的、対象、条件、今の作業を並べたものが、そのままプロンプト、つまりAIへの指示になっています。
構造化スキルを磨くことは、AIへの指示をつくる力を磨くことでもあるのです。
同じ1時間でも、AIに渡せるものが変わる
ここで、同じサービス案内を考えるAさんとBさんを想像してみてください。実際の比較実験ではなく、違いを考えるための例です。
Aさんは「いい感じの資料にして」と依頼し、返ってきたものを見て「違う」「もう少し分かりやすく」と修正を繰り返します。
Bさんは、誰のために、何を判断する資料なのかを整理します。分かっている事実と未確定の情報を分け、AIに任せる作業を具体的に伝えます。返ってきた構成案も、最初に整理した目的に照らして確かめられます。
同じ1時間でも、AIに渡している仕事の形が違います。私は、この違いが成果の差につながる大きな要因になると考えています。もちろん、成果には知識や検証、使うAIの能力も関わります。それでも、何を実現したいのかを整理して渡す力は、自分で鍛えられる大切な力です。
話を聞く瞬間から、AIとの仕事は始まっている
構造化は、AIの入力欄を開いてから始めるものとは限りません。
相手が話している時、文章を読んでいる時に、「これは目的」「これは条件」「これはまだ決まっていないこと」と、情報を分けながら受け取る。そのうえで、何が何に影響するのかを考えます。
ただし、素早く分けることと、相手の意図を決めつけることは別です。分からない部分は空欄のまま残し、「今必要なのは社内で相談する資料、という理解で合っていますか」と確かめます。抜けや食い違いを見つけられることも、構造化する価値です。
練習は、今日受け取った一つの相談から始められます。「目的」「事実」「条件」「未確定」「次の作業」に分けて書き直し、その整理だけでAIに仕事を頼めるか、試してみてください。
最初から速さを求める必要はありません。丁寧に分け、関係を確かめる練習が、会話を受け取りながら整理する力につながっていきます。
私が伝えたいのは、AIとともに考え、働く力です
これからの社会人にとって、AIと二人三脚で仕事を進める力は、ますます重要になると私は考えています。
その土台にあるのが、情報を構造として理解し、コンピューターに渡せる形へ整理する力です。AIに考えを整理してもらうこともできます。その整理が相手の意図や仕事の目的に合っているかを判断するためにも、自分自身の構造化スキルが必要になります。
私が講師として伝えたいのは、この力です。相手の言葉を理解し、仕事を分け、関係を整理し、AIに渡す。そして、返ってきたものを確かめ、次へ進める。
言語化した、その先へ。構造化する力を磨きながら、AIとともに生き、働いていく。それが、私が大切にしている学びの方向です。