「前より歌が下手になった気がする」
「以前のように気持ちよく歌えなくなった」
「カラオケが楽しくなくなってしまった…」
ボイストレーニングを始めた方から、ときどきこんな声を聞きます。
せっかく上達したくて始めたボイストレーニングなのに…と、不安になってしまいますよね。
でも実は、声の出し方を変えていく過程では、こうした感覚が生まれることは珍しくありません。
♪ なぜ、下手になったように感じるの?
私たちは普段、自分が一番慣れている声の出し方で歌っています。
長年続けてきた歌い方には、自分なりの力の入れ方や、声を出すタイミングなど、さまざまなコツという名のクセが身についています。
ボイストレーニングでは、呼吸や姿勢、体の使い方などを見直しながら、今より無理なく声を出せる状態を探していきます。
その過程で、
今まで意識していなかった筋肉の働きに気づく
無意識に入れていた余計な力を手放す
慣れていた声の出し方とは違う感覚を覚える
といった変化が起こります。
例えるなら、ペンやお箸の持ち方を変えたときのような感覚。
もっと大きな変化が必要な場合は、右利きの人が左手で文字を書くような感覚。
頭ではわかっていても、なかなか思いどおりに動かせない。
これまで自然にできていたことが、かえって難しく感じられる場合もあるのです。
でも、それは必ずしも歌が下手になったということではありません。
今までとは違う体の使い方を意識し、新しい声の出し方が少しずつ身につきはじめている。
そんな変化のサインなのかもしれません。
♪ 今までの歌い方は、捨てなくても大丈夫
ボイストレーニングに真剣に向き合うほど、いつでもどこでも、レッスンで習ったことを意識しなければと思いがちです。
例えば、お友達とカラオケに行ったとき。
「姿勢をちゃんとしなきゃ」
「息が浅くならないようにしないと…」
自分の番が回ってくるまで、そんなことを考えてソワソワ。
そして、歌い終わったあとも、
「あぁ、今の歌、音程が悪かったな」
「レッスンではできたのに…」
と、頭の中で一人反省会。
せっかくお友達とカラオケに来ているのに、いつの間にか歌うことを楽しめなくなってしまう。
そんな心の変化が起きることも少なくありません。
そこで、私がレッスンでおすすめしているのが、声の出し方を「Aパターン」と「Bパターン」に分けて考える方法です。
Aパターン:これまで慣れ親しんできた歌い方
Bパターン:ボイストレーニングで身につけようとしている新しい声の出し方
新しい声の出し方を練習するからといって、今までの歌い方をすぐに手放す必要はありません。
カラオケでは、エコーをたっぷりかけて、Aパターンで思いきり楽しむ。
一方、ボイストレーニングの時間には、マイクを使わず、Bパターンでの発声に集中する。
そんなふうに、目的によって切り替えてみます。
これは、ライブや舞台に立っている方にも同じことが言えます。
レッスンで新しい発声方法を学んだからといって、まだ十分に使いこなせていない状態で、無理に本番に取り入れる必要はありません。
練習を重ねるなかで、少しずつ使いこなせるようになったことから、本番の歌にも生かしていく。
それまでは、慣れ親しんだ歌い方も最大限に活用していいのです。
大切なのは、新しい発声方法にすべてを切り替えることではなく、自分が使える声の選択肢を増やしていくこと。
今まで積み重ねてきたものを大切にしながら、新しい声を育てていく。
そう考えるだけでも、練習への向き合い方が変わってくると思います。
♪ 新しい声を育てるために
Bパターンの声は、最初から思いどおりに使えるとは限りません。
音程が不安定になったり、声量が物足りなく感じられたりすることもあります。
そんなときは、歌を最初から最後までうまく歌おうとするのではなく、短いフレーズだけを取り出して練習してみましょう。
例えば、
無理のない姿勢で立つ
短いフレーズを、余計な力を入れずに歌ってみる
声の大きさよりも、息や体の使い方に意識を向ける
まずは、慣れない声の出し方に少しずつ親しんでいくこと。
そして、Bパターンの声が身についてきたら、そこに自分らしいニュアンスや表現を加えていきます。
やがて、今までのAパターンのような歌い方も、以前よりラクにできるようになるかもしれません。
♪ 上達は、いつも右肩上がりとは限らない
ボイストレーニングを始めたからといって、毎回、前より上手に歌えるようになるとは限りません。
昨日できたことが、今日はうまくいかない。
そんな日もあります。
ただし、歌いにくさが続いたり、喉に痛みや強い負担を感じたりする場合は、単なる変化の途中だと決めつけず、発声の方法を見直すことも大切です。
声は、思っているよりゆっくり変わっていくもの。
「前より下手になったかも」と感じたときは、以前の歌い方と新しく練習している歌い方が、今どんな状態なのかを整理してみてください。
今までの歌い方を楽しみながら、新しい声も少しずつ育てていく。
そんな向き合い方があってもいいと思います。
♪ 大人のボイトレは「練習してから」ではなく「練習するために」
スポーツクラブに筋力トレーニングをしに行くとき、わざわざ家で筋トレを済ませてから行くわけではありませんよね。
ボイストレーニングも、同じように考えていただけたらと思っています。
忙しくて家で練習する時間が取れなくても、大きな声を出せる環境がなくても大丈夫。
レッスンは、練習の成果を見せる場所ではなく、練習するための場所。
呼吸や姿勢、声の出し方を一緒に確認しながら、ご自身のペースで声を育てていきましょう。
大阪・本町での対面レッスンとオンラインレッスンを行っています。
各レッスンの詳細は、下の講座案内からご覧いただけます。