東京・小金井に位置する三光院は、京都・嵯峨野にある比丘尼御所(皇室ゆかりの尼寺)から、その伝統と料理を継承した尼禅寺です。
現状では御所流精進料理は三光院だけでしか継承されておらず、年間を通じて比丘尼御所由来のお祀り、行事の伝統を守り続けて、今に伝えています。
それは、雅な宮廷文化と厳かな禅の精神が融合した、世界でも類を見ない独自の食文化です。歴史的背景、季節の理(ことわり)、そして食材への敬意を学ぶ、本質的な伝統文化体験が提供できます。
これは星野香栄御住職様が精進料理総本山を標榜されるだけでなく、継承が難しくなっていた尼門跡寺院の伝統文化を継承、または復活させて「自分たちが楽しまなければ文化は続かない」との精神文化を残してくれたからに他なりません。
形通り、杓子定規を拒否し、同じ行事や料理でも毎年少しづつ演出を変えるという能動的な愉しみ。
三光院では『御修行』という言葉をよく使います。
これは「楽しんで取り組みましょう」という表現になります。
楽しんだ方が学びも深まることは、関係者共通の認識になります。
三光院が守り伝えるもの
1. 比丘尼御所料理(精進料理)の真髄
三光院の料理は、単なる菜食ではありません。かつて宮中や門跡寺院で育まれた「雅」の感性と、禅寺の「質素・清浄」の精神が一つになったものです。
ブランドや産地を競うのではなく、届いた食材をどう活かすかという「知恵と心」を大切にしています。どのような素材であっても、工夫を凝らし、丹念に手をかけることで、目にも鮮やかで深い滋味を湛えた一皿へと昇華させる。その技術と精神こそが三光院の矜持です。
全席椅子席で120分かけて召し上がっていただく精進料理は、中国僧由来の大皿料理(普茶料理)や日本僧由来の御膳料理(宿坊飯)とか明らかに異なる特徴が幾つもあります。
元皇女の尼宮様に召し上がっていただくために、無名の女官さんや無名の尼様が作り続けてきた欲のない、それでいて華やかな料理となります。その特徴をいくつか挙げますと。
一、煮物に一切の出汁を使用せず、時間をかけて淡味を引き出していく。(牛蒡だけで毎日3時間半以上かけて煮詰めております。当日煮たものしか提供していません。お出汁を使う料理も全て当日煮出した昆布のみ。季節にもよりますがお吸い物以外はお出汁が使われていない月も多いです)
二、快敷、飾り花と呼ばれる、食すことを目的としない草花がお皿を彩る。
三、御所流としては発展してこなかった調理法も多いのですが(擬き料理、保存食、燻製料理など)、三光院近代約百年の歴史の中で、独自の新しい昇華料理も創作定着させている。
ただし、美味しい野菜料理と精進料理には明確な差をつけています。したがって単なる新しいだけのお料理を提供することはありません。
2. 四季の営みと年中行事
通玄寺(現存せず)以来680年継承されてきた料理の歴史。その重みの中で、三光院では一年を通じて様々な行事が営まれます。
比丘尼御所においては、神様、仏様、皇室を等しくお祀りする文化が根付いてきました。これは神仏習合とは異なる文化文脈になります。
そして三光院の各種行事においては、必ず、ご縁の食材、ご縁の料理が付随してあります。
季節ごとの素材の力、暦に合わせた献立、器の取り合わせ、そして空間の設え。これら全てが一体となった「文化の体系」として、皆さまに体験を共有しております。
3. 伝統文化の継承と学びの場
三光院は、古き良き日本の伝統をただ保存するだけでなく、現代に生きる人々の心に響く「学びの場」でありたいと考えています。
これは婦女子教育に熱心だった西野奈良江御開基様が「女性が学べる場所を設けたい」として三光院を開かれたことにも由来します。
十月堂、留香閣という学びの場所は、あくまで料理でご縁が出来たらの大前提ではありますが、無償提供してきた背景もあり、各種日本文化の先生方、講師の方々、多くの習い事、お稽古を開催し続けております。
茶道、煎茶道、華道、書道、尺八etc。
料理、作法、歴史的な講話を通じて、日常の喧騒から離れ、己を律し、五感を研ぎ澄ますひとときを提供します。武蔵野の面影を残す小金井の静謐な環境の中で、時代に流されない本物の価値に触れていただきます。
提供している体験
精進料理の調理実習と講習: 伝統的な技法に基づいた素材の扱い、献立の組み方を学びます。
伝統文化ワークショップ: 季節の行事や歴史的背景に基づいた特別な体験講座を開催。
文化交流とコミュニティ: 御縁のある職人や専門家と連携し、日本の豊かな食文化を多角的に掘り下げます。
アクセス・環境
所在地: 東京都小金井市(JR武蔵小金井駅より徒歩12分。駐車場完備)
環境: 四季折々の草花が咲き、野鳥が訪れる豊かな自然に囲まれた境内。